チェーン・ポイズン (講談社文庫)

チェーン・ポイズン (講談社文庫)

自殺を決意したOLが「眠るように楽に死ねる手段」と引き換えに
生きると約束した1年間の物語。
B面は同じ約束を交わし自殺したと思われる3人の人物について追う
週刊誌記者の物語。





下の会話が印象に残った。

「不吉な話ですみません。もしも、あなたが亡くなられたら、
そしてそれを私が取材したくなったら、私は誰のもとへ行けば
いいですか?」
「誰って?」
「あなたを一番知っている人。あなたが正確に何を考えていたか
まではわからなくても、あなたという人間を知ろうとしたら、
私は誰に会えばいいでしょう?」
(P257-258)

自分が死ぬということは、今考えていること、好きなもの嫌いなもの、
欲しいと思っているもの、そういうどこまでも些細で個人的な情報全てが
永遠に認知される機会を失うということだと思う。
自分以外の人から見た自分の姿のつぎはぎだけが残って、
それもいつか消えると思ったら、上の問いに対して私はきっと
答えることができない。
だけど究極的に生き物は

生まれてきたら、セックスをして、子供ができれば、
あとは死ぬだけ。
(P203)

に過ぎず、人間も例外ではない。
だからちょっとの間でも誰かの断片を持って生きることができて、
死んだ後には誰かに自分の断片を持っていてもらえたなら
上等なのかなと思った。